ふじようちえん
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ふじようちえんは、東京の郊外に広がるのどかな環境の中にあって、忽然と楕円の姿を現す建築である。しかし、足を踏み入れると、建築そのものの存在が消えるほど、エネルギッシュな600人の園児と彼らを育んでいる集団が出迎えてくれる。
窓ともドアとも壁とも言えない建具が、屋根と地面の間をおおらかに仕切っている。何処がどうなっているのかを考える暇もなくお祭りの群集に紛れ込んだような熱気に包まれ圧倒される。
めまいがするほどの躍動感である。それが故に、屋根全体を第二の園庭としたウッドデッキの上に立ったときの、伸びやかな広がりはすがすがしい。この建築が持つ際立った二面性を、高々2mほどのレベル差で感じることが出来るのである。
同時に、全体を単純なエレメントに凝縮した、建築作品としての力強さを感じさせている。 そもそも、建築は自然の驚異から人を守って、人が集まる場の広がりを生み出すものである。特に、幼い子供たちが多く集まる幼稚園や保育園や学校といった施設は、集うものの過半が、弱者として必要以上に過敏に扱われがちである。 さらに、少子化の時代に突入した現在、親たちのわが子への関心はエスカレートし続け、怪我や汚れを成長の証として喜ぶ余裕もない。預かる側も危険回避にエネルギーを燃やし、どこか本末転倒な議論が繰り返されている。 そんな社会に対して、建築に何が出来るのか問われるかもしれないが、この幼稚園はその一つの解を与えてくれているようである。寒ければ走り回って身体を温め、日向ぼっこすればよい。暑ければ、木陰に涼んで水を飲み、風に吹かれていればよい。 ふじようちえんはそんな空間を用意している。 機械を使って環境を制御するのではなく、「人が動いて心地よい居場所を見つけたらいいじゃないか」とでも言っているような単純な建築が。今の時代にこそ評価されるべきである。 高気密高断熱だけが地球環境への配慮ではないことを、そして忘れかけていた人間の感覚を思い出させる建築である。なんといっても屋根の上を無我夢中に走り回る園児の姿は、幼い子供の本能を呼び覚ましている。 そのような感性を伸ばす幼稚園の存在は、園を運営する関係者の熱意と実践の上にあることは言うまでもないが、人と建築の両輪がそろった園舎であるからこそ、優れた建築なのである。 よってここに日本建築学会賞を贈るものである。 日本建築学会 記者発表資料より |