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二日目 その五

2022/12/2

高度を上げて行く。中国国境に近づいてくると軍用車が増えてくる。この軍用車もTATAゾウの仲間であろうが、バスとは違ってはるかにイカつい。空いばりしているデブのオヤジと、ヘビー級プロレスラーぐらいの違いがある。タイヤもデカくて踏まれたらイチコロである。ただし、意外なほどに礼儀正しい。無理強いして押し込んで来たりしない。ちゃんと下がって待っててくれる。優しいプロレスラーである。そのプロレスラーの群れをやり過ごしながら上り詰めるとセラという名前の峠に着く。標高は高い。13700フィートの看板がある。標高4176メートルである。富士山より高い。峠にはセラ湖がある。調子に乗って小走りをすると息が切れる。ここでは酸素濃度が地上の60パーセントしかない。あぶない。こんなところで高山病になるわけにはいかないので、ノロノロ歩くことにする。「ヤクがいる」というのでカメラを向けた。しかしどう見ても牛にしか見えない。牛にしか見えないとバスダに言うと、「ヤクの親戚は牛だからね」という。確かに毛は長めである。忙しくて床屋に行き損ねた長髪の牛である。やはり牛は牛であると思う。峠を越えて降りてゆくと、「ヤクの家族がいる。」というのでカメラを向ける。しかしやっぱりウシに見える。この旅の間ヤクと称する動物を沢山見たが、やっぱりどれも牛であった。バスダに問い詰めると、混血かもしれないという。じゃあヤクの血が混じってはいるがほとんど牛じゃないか。ついに本当のヤクにはお目にかかることはできなかったと思う。

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