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四日目 尾根

2022/12/2

この地は極めて縁起がよい場所だと言う。眼下の谷はヒマラヤを超え、ポタラ宮殿へと続いている。この尾根先で谷は折れ曲がり、もう一つの川と合流する。尾根の鼻先には神聖な岩があり、その窪みから水源もないのにいつも水が湧き出しているという。こう言う場所には必ずマニ車があり、赤青黄緑白の布が万国旗のように並んでいる。この地点からはブータンとインドとヒマラヤが全部見える。ここから見えるヒマラヤは中国の支配地域である。軍用ヘリコプターが飛んでいた。呑気に見ていたが、翌日そのヘリコプターは墜落したと知った。しかしここでは大したニュースにもならない。車の追突事件程度の扱いである。「たまにしか落ちないんだけどねー。」と言われた。ということは時々落ちるということか。「タワンからヘリコプター便があるよ。」と言われたが、「たまにしか落ちない」ヘリコプターに乗るのは気が進まない。尾根にはレモングラスが群生している。ナタで薮を刈りながら進むと、スパのような香りが身を包む。

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