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手塚流BBQの奥義

2017/9/4

■始めに
我々のBBQは一味違う。
薄い肉をへらっと焼くようなことはしないのである。 薄切りの野菜なんぞ焼いても乾いてパサパサになるだけである。 我々の本格BBQ奥義を公開したい。ドンドン真似してください。うまいですから・・・。
手塚流BBQとして巷に広めてください。
まず肉は塊で買う。我々の場合はハナマサに出向いて8キロほどの肩ロースを一塊そのまま買う。 なぜ8キロかというと牛の体重は大体決まっているので、肩の肉も大体同じ重さなのである。 よって20キロの肩ロースなど存在しない。 あったとすればそれは普通の牛ではないプロレスラーのような異常体型しかありえないが、 そんなものが市場に出回ることはない。
ハナマサというのは業務用の肉をおろすスーパーであるが、一般人が紛れ込んでも全く問題はない。 ただしなんでもかんでもドンドンと置いてある。野菜もダンボールに裸で突っ込まれている。 あまり色気はない。しかし品質は良い!
私は和牛をBBQに使わない。 和牛というのは動脈硬化寸前の肉に脂身が奥まで侵入していてその脂身をおしいただく高級品である。 なるほどうまいかもしれないが、どうも健康な気がしない。 これはフォアグラが健康な鳥のレバーではないのと同じである。 和牛やフォアグラは罪の意識を押し殺しながら、 店の奥でこっそりと少々の酒で流し込むぐらいが丁度良いのである。
BBQはアウトドアライフであるから、アウトドアらしく健康な肉が食べたい。
1970年代の「はじめ人間ギャートルズ」というアニメーションをご存知だろうか?
あの中に登場する輪切りの肉塊。 アレである。
実際のところ軟弱な現代人のアゴはそんな肉を噛み切る力はない。 人間はライオンではないのである。 ライオンはムシャムシャと肉をうまそうに頬張っているが、彼らの噛む力は450kg。 人間の10倍もあるのである。 無理なものは無理。
しかしライオン家族がかぶりつく肉塊はうまそうで長年私の頭から離れたことがない。 そのイメージにあうのは和牛ではない。 アフリカでライオンが齧っているのはバッファローであるが、 日本のスーパーマーケットは残念なことにバッファローの取り扱がない。
となると何が次善の策か? 私の選択は牧草を食べ太陽の下で育ったオーストラリアンビーフことOGビーフである。 安いがしっかり肉の味がある。 アメリカンビーフも良いが、どうも成長促進ホルモンの味がする。

■火起し
BBQはまず火起しから始まる。
まず炭を井桁に丁寧に積めるだけ積んで、その下に着火剤を置く。 ここでバタバタ扇ぐと火は消えてしまう。 着火剤は油を立ち昇らせつつ延焼させていく力があるので、積み方が勝負である。 慌ててはいけない。この井桁のタワーがしっかり燃え始めるまで待つ。 この井桁のタワーに火が燃え移ったら、それを火種として炭を載せていく。 ここではじめて扇ぎ始める。炭はいきなりガサっと入れるのではなく。 火種を上と横から包むように重ね、丁寧に足していく。 炭をケチってはいけません。 よくある300x300x150ぐらいのダンボール箱一杯の炭に全部火が移るまでしぶとく続けていく。 ひたすら扇ぐ!この作業に着火から30分ほどかかるが、決していそいではいけません。

■野菜のホイル焼き
野菜はホイル焼きにする。肉より先に野菜を焼く。
なぜかといえば、肉を焼く火は熾火でなければならないのであるが、それには炭に火が回ってから1時間ほどかかる。 熾火でというのは砕けた炭が白い灰の裏で赤ーい火を優しく放っている状態である。 肉はボウボウ燃えている火の上に載せると、自分の脂に引火して炎上して真っ黒になってしまう。 この待つ1時間を無駄にしないために野菜を焼く。
野菜のホイル焼きの基本は「皮を剥かないことである。」我々はジャガイモと玉ねぎとトウモロコシを使う。 特にトウモロコシは皮が付いていないと絶対にうまくいかない。 コンビニのホイルは時々樹脂製のまがい物があるので注意。 電子レンジでは使えても、炭火の上に載せるとあっという間に溶けてしまいます。 食材も台無しになります。 業務用と記されているものは問題ないのですが、そうでない場合はアルミであるかどうか確かめましょう。 野菜はしっかり隙間がないように包みます。 隙間があるとそこから火が侵入して食材が黒焦げなります。 野菜は網の上ではなく炭の上に乗っけて大丈夫です。 時間は40分ぐらいかかります。網の上だと1時間かかります。 トングで掴んで火から下ろし開けると、トウモロコシの葉っぱは真っ黒になっています。 だけど中は大丈夫。剥くと弾けるように黄色の粒が出てきます。 玉ねぎも中は甘くジューシー。ジャガイモは4つに切ってバターを載せて岩塩をかける。 これだけで十分です。最高のジャガバターができます。同じ要領でカボチャやナスもできます。 カボチャはそのままはさすがに厳しいので切り分けますが、絶対に薄切りにしないこと。

■肉
肉をスライスします。厚みは40ミリ。4センチですね。
これより薄くても厚くても上手くいきません。定規があったら測ってください。 これを網に載せます。ただしここで熾火になっていることを確かめてください。 絶対に火がボーボー燃えている炭に載せてはダメです。 ここで新しい炭を足してしまうひとがいますが、絶対にダメです。 熾火でじっくり遠赤外線効果です。時間は25分。表面がカリカリになって焦げる直前にひっくり返します。 あんまり頻繁にひっくり返すと肉汁が逃げます。まず表面を固めて肉汁を閉じ込める鎧を作るんです。
そうそう、それから絶対に焼く前に塩をしてはいけません。塩すると美味しい汁が全部出てしまうんです。 塩は焼いた後です。繰り返します。前もって塩してはいけません。

■肉を食べる。
各自ナイフとフォークがあるときは焼けた肉にそのまま塩と胡椒を降ります。
あとは何もいりません。内部は薄いピンク色に仕上がっていて、ナイフで切ると肉汁がジュワッと出てきます。 大人数で食べるときは切れる包丁で3ミリ厚にローストビーフのようにスライスして大皿に並べると良いです。 はじめ人間ギャートルズよろしくそのまま齧るという手もありますが、私には無理でした。 アゴが外れてしまいます。 サバンナ育ちの勇者ならともかく、コンビニの柔らかい離乳食のような人工食に慣らされた日本人のアゴは弱すぎます。 ということでイメージは「はじめ人間ギャートルズ」ですが、同じ食べ方は無理でした。 確かに高級ホテルのローストビーフだって厚さ4センチあったら噛みきれないですよね。ボナペティート!
出演は手塚建築研究所の寺田和彦氏でした。

“手塚貴晴Facebookページ(2015/9/18) / 手塚流BBQの奥義”

2015年9月18日
手塚貴晴

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