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雑煮

2023/3/17

雑煮は習慣である。何故だかわからないが、同じものを先祖伝来の習わしとして受け継いでいる。日本津々浦々には独自の手法があり、手順を少し間違えるだけで、嫁には姑から小言が降ってくる。迷惑であろうと思う。と、同時に年寄りが主役を演じる稀な機会であるから、そこは従順に受け答えする方が利口である。地域にはそれぞれ風土があった。湾が違えば魚の身振りが違い、峰を越えれば茸の香りが違う。雑煮はその相違の名残であると思う。

我が家の雑煮は頃合いで決まる。温度と時間が全てである。鰤を下ろし強めに塩を振って一晩寝かせる。寝かせた鰤を一口大に切り、水で半分に割った酒で炊く。炊くときは沸騰しないギリギリの温度で3分程。出して予熱で火を通す。出汁はアゴと椎茸と昆布。アゴとは飛び魚の方言である。一晩水につけ、戻し汁ごと炊く。こちらは火を通して構わない。身は炊く前に崩しておく。出汁は丁寧に極細めのザルか木綿で濾す。干し椎茸を使う。なぜか生椎茸は味が出ない。干し椎茸を一晩水で戻す。その戻し汁ごと炊く。これも沸騰するかしないかの温度で5分ほど炊く。炊けたら椎茸を一つ一つ取り上げ、出た出汁は丁寧に極細めのザルか木綿で濾す。昆布を水に一晩つけて出汁を取る。こうしてできたアゴと椎茸と昆布の出汁を合わせる。塩と醤油で味を整える。かつお菜を多めの水で炊き、絞ってまとめ、一口大に切る。我が家の餅は自家製である。年末に杵と臼を並べ蒸籠で餅米を蒸す。味は格別である。注ぐときは、最初に餅で、次は出汁。逆にすると設えが崩れる。その上に椎茸と鰤とかつお菜を盛り付ける。

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