がんばらないエコロジー②
たとえばね、「私はエコロジカルです。車はプリウスに乗っていますからね。最低限のエネルギーで走る車で、熱効率がいいんですよ」という人よりも、昔ながらの裸電球をつけて、自然の風を感じる軒下に座って、移動するときは自転車に乗っている人の方が、ずっとエコロジカルなんですよ。でも、そういうのは評価基準にはのらない。
建物の中を24時間換気するというのも、変な話で、なんで窓を開けようと思わないのかって。24時間機械を回して、窓を締めて断熱して。だから窓を開けられない建物が増えているんです。
僕たちが建物をつくっていて大変だと思うことは、24時間換気で気密性をどんどん上げなきゃいけないこと。ここでは、こういう製品でやりなさいっていうと、ものすごいエネルギーを使う建物ができるわけです。確かに冷暖房が効くかもしれない。一定の温度で室内が維持されて、でも人にとって、それが必ずしも気持ちがいいとは、とても思えないなあって。
人間って、いろいろなものが変化する中で生きているんです。暑かったり、寒かったり。でも、それって楽しみの一部なんですよね。それを失ってしまうと、甘くも辛くもない食べ物を、ただ食べているようなもので。栄養だけあればいいというもんじゃないですよね。人間って物じゃない、やっぱり、いいなと感じられる環境でないと、変じゃないかって思うんです。
夏、暑い時に、カフェの外のテーブルに座って、レモンスカッシュを飲んでいる人がいる。その人に向かって「あなた、エコロジカルなことを考えているんですね」とは言わないでしょ。その人は我慢なんかしていなくて、ほんとに気持ちがよくて、室内に居たくないんですよ。だからみんなが海に行ったり、川に行ったりするわけ。冷房が効く環境より、もっと、いいことがたくさんあるんですよ。
昨日も僕たち地方に行っていて、飛行機が飛ぶまで時間があったから、室内じゃなく、外のベンチに座っていたんですよ。冷房のかかった部屋より、そっちのほうがいいわけですよ。
いま一生懸命、冷房をつけろというけど、ほんとはもっといいライフスタイルがあるはずで、それをもっと考えていかなくちゃいけないと思う。そうしないと人の生活がおかしくなっちゃう。