工場萌え

『フクラス』の時にも、きれいな灯りをつくるんじゃないと。工場萌えだっていう話をしていて、みんな、工場萌えって好きでしょ? 灯りが機能的にぶら下がって。『フクラス』の屋上は、じつは工場萌えなんです。なんで工場萌えかって、最上階は機械しかない。
でも、そこを町にしたいから工場萌えのように、しちゃおうと考えた。最初はきれいに壁で囲う案を、清水建設が提案してきました。でも、僕がハサミを持ってきて、模型をチョキチョキっと切り取った。あるがままの機械を見せたかった。照明も必要なところに必要なだけ、工場萌えのままに。

どんな渋谷がいいかなっていう話を、『フクラス』の最初の打ち合わせの時にみんなでしていて、僕がビジュアルで見せたのは、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のマンガに出ていた、一つのシーンでした。
それは焼き鳥屋みたいな店があって、配管が上に突き出したまま、ゴチャゴチャになっちゃっているんだけど、なんだか、すごい、たのしそうで。建築家って、カッコイイのがいいとか言っておきながら、じつは新宿ゴールデン街の飲み屋が大好きだったりするわけですよ。『建築家なしの建築』を書いたバーナード・ルドフスキーという人がモデルで、要は必要に応じて物がたくさん増殖していくというのは、すごいたのしいことになっていくだろうなと思った。