このたび、アメリカ建築家協会(AIA:American Institute of Architects)より名誉フェロー(Honorary Fellow of the American Institute of Architects, Hon. FAIA)に選出されました。
AIAは1857年に設立されたアメリカを代表する建築家団体であり、その中核をなすCollege of Fellowsは、建築文化の発展に顕著な貢献を果たした建築家を顕彰する組織として広く知られています。名誉フェローは、そのCollege of Fellowsによって海外で活動する建築家に授与される称号であり、国際的な建築文化への貢献を評価する顕彰制度です。
AIAには名誉会員(Honorary Membership)と名誉フェロー(Honorary Fellowship)の二つの制度があります。いずれも建築文化への顕著な貢献を顕彰するものですが、その目的と位置付けが異なります。名誉会員は建築実務、教育、研究、文化活動など幅広い分野における貢献を対象とする制度であり、多くの優れた建築家や教育者、研究者が選出されています。一方、名誉フェローはCollege of Fellowsによって選出される制度であり、海外で活動する建築家を対象としています。両者は優劣の関係ではなく、それぞれ異なる視点から建築文化への貢献を顕彰するものと理解されています。
名誉フェローの特徴の一つは、自ら応募することができない点にあります。候補者はCollege of Fellowsの選考組織によって選ばれ、その審査過程も公開されていません。そのため、この称号は競争的な賞というよりも、建築家としての長年の活動に対して与えられる名誉ある顕彰として位置付けられています。
これまでには、ノーマン・フォスター卿、リチャード・ロジャース卿をはじめ、伊東豊雄氏、妹島和世氏、西沢立衛氏、坂茂氏、山本理顕氏など、現代建築を代表する建築家たちが選出されてきました。また近年では、より若い世代を代表する石上純也氏も選出されており、名誉フェローが単なる功績への顕彰にとどまらず、その時代の建築文化に新たな地平を切り開いてきた建築家を評価する制度であることがうかがえます。
私自身、このたびの選出を個人の成果としてではなく、多くの方々から受けた学びと支えの積み重ねの結果として受け止めています。建築を学ぶ機会を与えてくださった武蔵工業大学(現東京都市大学)、そして国際的な視野を広げる機会を与えてくださったペンシルバニア大学での経験は、今日の私の建築観の礎となっています。
とりわけ、ペンシルバニア大学において指導を受け、その後も長年にわたり励まし続けてくださった恩師のモイセン・モスタファヴィ先生、そして日本において建築家としての基礎を育ててくださった東京都市大学名誉教授の新居千秋先生には、深い感謝の念を抱いております。
また、これまで共に建築を考え、つくり続けてきた同僚や学生たち、国内外のクライアントや地域の皆様、そして日々支えてくれた家族の存在なくして、今日の私はありません。今回の選出は、そうした多くの方々との出会いと協働の積み重ねの中でいただいたものと受け止めています。この場をお借りして、私を育て、支えてくださったすべての皆様に心より御礼申し上げます。
建築とは、一人の力によって生まれるものではなく、多くの人々との出会いと対話の中で育まれる営みです。振り返れば、これまでの歩みは常に人に導かれ、人に支えられた道のりでした。このたびの栄誉を、私個人への評価としてではなく、そのような豊かな縁の積み重ねに対していただいたものとして受け止めています。
今後も建築と教育の活動を通して、人と人、人と自然、人と社会を結び直す場をつくり続けたいと思います。そして、これまで私を育ててくださった方々から受け取った学びを次の世代へと手渡していくことが、今回の顕彰に対する何よりの恩返しであると考えています。
ありがとうございました。
手塚貴晴



