古今東西名建築はシンプルである。屋根を掛けそこに棲まうという建築本来の姿に立ち戻ると、四角や丸という純粋な幾何学に落ち着く。数ヶ月前にボストン市立図書館に行った。矩形の平面に大きなヴォールト天井がかっている。美しい。説明は要らない。なんといっても圧巻なのは、その純粋な構造美である。残念ながら現代社会はシンプルな設計に手厳しい。もしボストン市立図書館の設計が現代の建築設計競技に提出されたとしたら、一次審査も通らないであろう。公開設計競技で何百という応募案の中から選ばれる為には、目を惹くような平面形態や断面形態で武装していなければ戦えないのだ。極めて優れた審査員に恵まれたポンピドゥセンターのような事例は無いことは無いが、極めて稀である。学生コンペも同様で、複雑怪奇なアクロバットを思いついた方が勝つ。しかしながら本当に優れた建築の殆どは、変なアクロバットとは無縁なのである。斜めの線が入ったり、ボリュームが貫入したりはしない。単なる鉛筆の勢いで有機的に波打たせた屋根など要らない。当たり前の平面に最も美しく合理的な構造の屋根をかける。アーチや非展開面の幾何学を用いて正しく架構する。そこに美しい光を入れる。それだけで無限に試すべき試みは含まれているのだ。ルイスカーンのキンベル美術館やエクゼターの図書館。シャルトル大聖堂。アーヘン大聖堂。ラヴェンナの大聖堂。ブルーモスク。法隆寺金堂。三十三間堂。無数の建築を回ったが、私が大好きな建築は皆シンプルな形をしている。







