菌のはなし

すべての菌が共存しあえる環境を

コロナウイルスが感染拡大する以前、日本ではノロウイルスは恐れられた存在でした。でも、ノロウイルスは先進国でしか繁殖しない菌といわれています。同じく大腸菌O157も、先進国でしか繁殖しない。種類が無数ある菌の中で、ノロウイルスやO157は、どちらかといえば繁殖率が低く、弱くて増えない菌です。

30人いるクラスで、O157が一人の生徒だとすると、彼は悪いやつだけど、クラスのみんなと一緒にいるところでは悪さはしない。ところが一人になると、悪いことをするのがO157なのです。

インドではO157は、あまり問題視されていません。それは誰も病気にならないから。それよりもっと怖い菌、コレラなんかがあるから、それどころじゃないわけです。先進国の人間がインドに行けば、そういった菌に慣れていないので一発でやられます。だから相当、気をつけないといけません。

菌は、弱い、強い、いい、悪い、いろいろな面を持ち合わせていて、悪さをする菌だからと人間の都合のいいように、一方的に特定の菌だけ排除するというのではなく、菌と共存しあえるような関係の環境にととのえていく、という方向性を探っていくことも大事です。

木にしても、じつにいろいろな菌がついています。『ふじようちえん』の建て替えするとき、園庭に3本の大きな欅の木がありました。僕らは木を切らず、そのまま取り込んで建物をつくることにしました。木についているバクテリアは、これまで子どもたちに、すごくいいことをしてきたんだろうと思ったからです。木には虫もいるだろうし、風にゆれる葉の音、木陰もできる、その存在自体がとても大切だと思って。