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ぐりとぐら

2016/1/30

しばしば我々をぐりとぐらと重ね、咄の酒肴にしたててしまう人々に出くわす。それらの方々の網膜には、ねずみの耳つきの頭部が我々夫婦の頭にすげ替わり、それぞれ赤青のシマシマシャツの上に載っている像が映っているらしいのである。我々夫婦の持ち物はことごとく青と赤である。私自身青シャツだけでも100着は下らず、靴下に至っては倉庫の分までいれては数えることも叶わない。色というものは流行に左右される。綺麗な青や赤のものを見かけた時はすかさずまとめ買いをしておかないと、次の機会まで下手をすると10年待たねばならない。ぐりとぐらは何時も同じ服をきているが、実は行きつけの仕立て屋さんがいて、特別にあつらえてくれているのだろうかと思いを巡らせてしまう。ぐりとぐらは食いしん坊であるが、我が家も我が家なりに食べ物にこだわりがある。出来合いの出汁の素やブイヨンなどはご法度である。その我々からみれば、ぐりとぐらのホットケーキは実に魅力的である。単純な卵と小麦粉という組み合わせであるがゆえに素材に拘っているに違いない。卵は特大である。焼きあがったホットケーキは実にふっくらと魅惑的な黄金色に染まっている。和三盆でも使って上品な甘みに仕上げているのであろうか?いやいや森の中であるから、新鮮なメープルシロップが粗野ながらも奥深い甘みを喉奥へと届けてくれるに違いない。手塚貴晴はぐりとぐらなる名作をつい10年ほど前まで知らなかった。決して本を読まない子供ではなく、むしろ児童文学全集53巻を舐めるように読み潰すほどの本の虫であったのであるが、記憶にないのである。現在手塚貴晴は49才であるから、ぐりとぐらが日本の子供絵本の定番にまで成長する以前に、もっと字数の多い本に進んでしまったのであろう。よって40近くにもなって作品を拝見した時は、純粋に芸術作として新鮮な眼差しで鑑賞することとなった。現在44才の手塚由比の方は子ども時代から親しんでいたようである。この辺りには微妙な世代間格差がある。いまやぐりとぐらは我々夫婦といちいち似ているだけに想い入れは深い。その後子供が生まれ一冊一冊読み聞かせるようになって、その彼らも10才と7才。もはやぐりとぐらは他人でない。さすれば気になるのはぐりとぐらの関係である。単なる友達で親不在のまま二人暮らしを続けているのは不自然である。きっと我々と同じく夫婦なのではないか?なれば何れ子供が生まれる筈である。子供達は何色になるのであろうか?我が家の娘は黄色、息子は緑色である。ぐりとぐらはネズミであるから子沢山に違いない。二色という訳にはいかないから、グラデーションで対応するのであろうか?いやそれは無理だ。洗濯すると色落ちして微妙な色合いは区別がつかなくなり所有権が不明確になってしまう。ということは女の子は赤、男の子は青という単純な区分けで、すべてを分かち合う家族になるのであろうか?

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