Message

Back

ジャムセイ・ガッツァは木と石で作る

2023/2/15

ジャムセイ・ガッツァは木と石で作る。日本では途方もない贅沢かもしれないが、ここでは正しいやり方である。一番近い都市ゴワティはここから350キロ離れている。車でまる二日の距離である。ゴワティから買うと、全てが原価の数倍になる。輸送費である。コンクリートで作ると建設費は下請けのかすかな金額分しか地域に残らない。石であればここにはいくらでもある。小径の木であれば手で運べる。大工もいる。地域のお父さんお母さんで作れば、全てがコミュニティーに残る。失われた技を取り戻す為にブータンとチベットより匠を呼びワークショップを開く。日本の大工も参加する。やってみることにした。子供達は明日から一人一本ずつ木を植える。大地からの頂き物の木材を、生きた木として返す。

現在の校舎は17年前の鉄筋コンクリート造である。しかし弱い。この学校に限らず、近年の建築はほとんど鉄筋コンクリート造である。しかし鉄筋が申し訳程度しかし入っておらず、柱も木造のように細い。この地は地震の巣である。次の地震が来たら倒壊することは目に見えている。現在の校舎は既に傾いている。全く基礎工事を行なっていないからである。誰も鉄筋コンクリート造が好きとは言わない。しかし木造の造り方を皆忘れてしまったから、遠くの建設会社に頼んでコンクリートで作るしかない。屋根はトタン板かコンクリート。夏は暑く冬は寒い。ここは標高3000mである。

かつてこの地には貧困がなかったという。新婚夫婦のために村総出で家を作り、畑をあつらえたという。子供は皆で育てた。家は地域の木と石でできていた。そこに道が通じ文明が入り始めると、貨幣が生活の基本となった。貨幣を手に入れる為に道路工事に従事する。手に入れた貨幣はコンクリートの家を作る為に使われて、地域に残らない。新婚夫婦の為に家を作る余裕はもう村にない。新婚夫婦は出稼ぎに出かけ、コンクリートの家を建てる。畑は荒れて行く。貧困が生まれ孤児がでて、年寄りは一人になる。

建築を変えることで地域が変わる。きっと変わる。

Facebookでシェア
Twitterでシェア