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子供とバックグラウンドノイズ

2023/6/19

子供環境を設計していると、時折高度な遮音環境を求められることがある。適度な遮音は良いかもしれないが、子供達にとって高性能な遮音は必ずしても良い環境でないどころか毒になる場合もある。幼児はノイズキャンセリング機能を備えている。その機能は適度で健全なバックグラウンドノイズがある環境が前提となっている。健全な音とは風が奏でる木々の擦れあう音や水の音などを示す。ふじようちえんにおいてお互いの音が気にならないのは、絵の具の色が沢山混じり合うとグレーになるように、音同士が混じり合い特定の情報が消えバックグラウンドノイズとなるからであろう。外の音と中の音が混じり合い健全なバックグラウンドノイズを形成している。

廊下に開かれたオープン型の教室はうるさくて使えないという批判がある。それは開いていることが悪いのではなく、反響の問題である。特定の音が人工的な壁面でエコーを起こすと特定の情報が増幅される。我々が設計した瀬戸ソラン小学校では、エコーを徹底的に抑えるパネルを装着している。ふじようちえんは外廊下であるからそもそも共用空間からの反響はない。音環境の設計は静かな空間を作ることではない。健全なバックグラウンドノイズに満たされた環境を作ることである。

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