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麻殖生 龍哉氏のコメントが良かったので転載。

2023/7/11

麻殖生 龍哉氏のコメントが良かったので転載。

私は楕円形のふじようちえんが生まれた瞬間に立ち会った限られたメンバーの1人でありました。その瞬間の鳥肌が立つような感覚は今でも覚えております。色々な伏線があったのでサイドストーリーとしてひとネタ。

この写真にあるスタディ模型の半数以上は当時スタッフであった私が作ったものだと思います。当時の手塚事務所では曲線を使った建物はなく、最初は当たり前のように直線を使用した案を作っていました。しかしあるところから敷地形状や残す建物、樹木の絡みから直線に限界を感じた私は普段使わない曲線を使った案をスタディし始めました。しかし、それらの案を見た手塚さんから案の定「曲線禁止ね」と言われ「やっぱりな〜」となり、頭を切り替えて直線基調のスタディに戻したのでした。

するとある日、手塚さんがバタバタとスタディルームに現れ「いい案ができた!」と言いながら堂々と曲線を描き堂々と樹木を跨ぎ始めたのです!びっくりしながら私は「手塚さん、、、曲線禁止なんじゃ、、、」と。そしたら手塚さんは「気が変わった!」と言い、イニシャル模型をものの10分くらいで作り上げました。

私はその時、言ったことと違うじゃないか、、、と思いながら、これはすごい建物になるんじゃないかとワクワクしながらその場を眺めていました。

手塚さんご夫婦は所謂「建築家」というある意味芯の通った信念や理念、作風をもった建築家というイメージが強いかもしれませんが、実際は夫婦の連携に加えて「チーム」で仕事をするという印象が強いです。

スタッフが作ったスタディもすべて吸収してフィニッシュにもっていくストライカーのような動きをします。

手塚さんの描いた超楕円は敷地全体を無駄なく使い、跨いだ樹木は建物を貫通して残されました。

今思うのは、全てのスタディは無駄ではなく繋がっていたんだなぁという事です。様々ななスタディがインスピレーションを生み決定的なアイデアに結びつく。それはスタッフ冥利につきる一瞬だったと勝手に思っています。

そして建築家って気が変わってもいいんだ、という事も勉強になりましたw

一生の内に何度も訪れることのない貴重な一瞬に立ち会えたこと、光栄に思います。


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