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超高音域について —–大橋力氏の研究に寄せて—–

2023/6/19

音に関しては大橋力氏という巨人がいる。大橋力氏には山城祥二という芸名がある。芸名というのは芸能山城組というバリ島の民族音楽を主体にしたアーティストグループを率いているからである。一般には映画アキラの音楽を担当した業績で知られている。異能者と言って良い。人工知能から音楽に至るまで異常なまでに守備範囲が広い研究者である。特に耳に聞こえないハイパーソニックすなわち超高音域の研究に関しては世界的権威である。私の音に関する記述は氏の受け売りの部分が大きい。

氏によれば人は耳で聞こえない波長も聞いているという。一般に可聴域は20KHzまでと言われる。普通に耳で聞こえる音域である。CDはこの可聴域までしか対応していない。ところが氏によれば可聴域を超える20kHz以上も人は聴いているという。長い間CDは音の再現性でレコードを凌駕し完全に置き換わるものだと思われていた。聴覚を情報として処理するのは表面から近い大脳皮質の部分であると考えられてきた。大脳皮質は極めて優れたコンピューターである。シナプスという組織がつながり合い回路を作り電気信号を処理する。その信号の伝達経路を追うと20kHzの可聴域までしか処理できていないことがわかっている。

しかし実際の情報処理過程は遥かに複雑である。論理回路である大脳皮質で処理された情報は整理され中脳へと送られ、もっと包括的な情報として保存される。音楽であれば一つ一の音を順番に論理的に並べるのが大脳である。それを一連のメロディーとして保存するのが中脳の部分である。その保存プロセスでは不必要な論理は無視されて情報が圧縮される。これはコンピューターが情報をZIPファイルに圧縮されるプロセスと似ている。他の情報との共通項すなわちアプリケーションの部分は後で保管できるので、差異の部分だけを保存する。その情報は幾つかの他のファイルと関連づけられ保存される。これをゲシュタルトと言う。メロディーは一つのゲシュタルトである。ピアニストの場合はさらにそのゲシュタルトに指の動きや強弱も含めて保存されている。指一本一本の動きをいちいち大脳で考えているとピアノは弾けない。脳の奥には自動演奏をする自分がもう一人いる。それを制御する意識の支配下にある大脳と連携しながら制御する。中脳の更に中には脳幹がある。その脳幹には生命維持に最も大切な情報が保存されている。脳幹には化学物質によって伝達するシステムがある。我々がごく小さな生命体であった時代から保持している能力である。この脳幹が20kHzを超える領域を処理していることを証明したのが大橋力氏である。超高音域が快感を感じる化学物資の分泌を促していたのである。超高音域においてレコードがCDに勝る部分があるという。レコードの音が柔らかいと感じる人の主張は事実であったのである。大橋力氏によれば、人の行動はこの超高音によってかなり影響を受けているという。大橋氏の行った二つの絵を使った実験がある。二つの全く同じ絵を全く同じ設えのち別の部屋に置き、両方の部屋にジャングルで採取した効果音を流す。ただし一部屋のみ20kHzを超える超高音域を含む効果音を流す。すると人々はきこえないはずの超高音域に導かれて絵を選ぶという。超高音域は自然音に普通に含まれている。

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