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Benefit of inconvenience 不便益と僻地

2023/9/27

「なぜ日本からこんなに遠くまで来たのか。」という質問があった。多分中学一年生ぐらいであろうか?良い質問である。Benefit of inconvenience 不便益の話をした。かつて日本は大陸からみて究極の僻地であった。黄金の地ジパングを目指したマルコポーロは遂に日本に辿り着けなかった。鑑真和上は五回も渡海に失敗し失明。六回目にして漸く日本に到達した。大陸からみれば日本は不便な僻地であった。一方今歴史を振り返ると、日本が独自の文化を保ち続けることができたのは僻地であったからだと思う。日本を占領したところで、その先には何もない海原が広がるだけである。このジャムセイ・ガッツァがあるタワンという地方も同様である。大変な山奥である。大きな街から悪路を500キロ。東京と大阪ぐらい離れている。その奥地でジャムセイ・ガッツァの子供達は皆幸せにしている。少なくとも私にはそう見えるし、責任者のゲンラも皆happyだと断言している。これが言い切れるのは、ここが僻地だからである。一切の要らぬ誘惑がない。自分が幸せであるかどうか比較する対象が一切ない。あるのは限りなくうねうねと続くヒマラヤの山脈と谷川だけである。一時間歩けば尾山台駅前の半分もない商店街があるが、売っているのはイケていない靴と文房具だけである。都市に行けば良いこともある。色々な愉しい物もある。一方でも悪い物もある。悪い出来事もある。ここは何一つ贅沢品はないが、少なくとも悪い物は一つもない。悪い人もいない。世の中の良いことだけがあるように思う。ジャムセイ・ガッツァは大都市では成立しない。ゲンラはこの孤児院を開く前に、アメリカのボストンにいて理想の孤児院を作ってほしいと言われたが「できない。」と断ったという。なるほどここに来るとわかる。「ここではできても、デリーではできない。」そう。不便であるが故にある豊かさ。それがここにはある。

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