音のはなし

ジャングルの音

引き続き、音の話を続けます。
バリ島のジャングルの中、ケチャダンスを鑑賞したことがありました。神聖な雰囲気のもと、独特のリズムを刻む音楽にみんなが興奮し、「これ、いいよね」と息子と一緒にアイフォンに録音し、帰国して楽しみに再生すると、ビィーという途切れることのないノイズで、肝心の音楽は聞き取れません。「録音に失敗したな」と、大橋先生に話すと「違うよ、それが本当の音なんだよ」つまりビィーという音は、ジャングルのバックグランド・ノイズだというのです。

ジャングルの中に身を置けば、自分もその中の環境の一部となり、そのノイズのように聞こえた音は、実際、そこで耳にしていたはずだと。ですが体の中でノイズキャンセルが機能し、その存在にまったく気づいていなかったのです。しかし、自分がジャングルから一歩外に出ると、そのノイズキャンセルは働かなくなり、耳障りなノイズに聞こえしまうというわけです。

私たちが生きいている世界は、静穏ではなく、常に雑多な音がある状態の中にいて、その雑多な音の中には、高周波も含まれ、人間の脳や体というのは、その高周波の中で安定するようにできていると、大橋先生は教えてくれました。

人間の体というのは、ジャングルの中にいるようにできていて、じつは、ここが大事なところで、人間はジャングルの中で育った種なのです。人間は大きな自然の中の一部として、存在している身なのです。