音のはなし

ノイズキャンセルとは

人間の体というのは、ふだんの生活の中でも、ジャングルの中にいるときと同じようなことが起こっています。自分の心音や呼吸音は、聞こえません。それらは無意識のうちにノイズキャンセルが体で機能していて聞こえないのです。

ところが水の中に潜ると、音のある環境から一変して無音の世界になります。するとゴオーと、自分の心音や呼吸音が聞こえてくる。

同じような環境を人工的に体験できるのは無響室です。ここは音が全部、吸音されるような静かな空間。じつは、そういう環境で人間は45分以上働いてはいけないという、建築の現場でのきまりがあるくらいで、何が起きるかというと、自分の心音や呼吸する音がどんどん大きく聞こえてくる。周囲から音がしなくなると、その音だけが際立って聞こえてきてしまうのです。これはノイズキャンセルの機能が働かなくなってしまっているからで、まわりに音がなくなると、その音は消せなくなる。

このノイズキャンセルというのは、電気シグナルで音の情報が脳に送られ、自動的にキャンセルされています。そういうシステムが体の中で行われ、人間はバランスをとっているのです。これって、すごいことです。

じつはバクテリアの世界も、同じことがいえます。ジャングルという存在があったら、その中にバクテリアのフローラがある。非常にたくさんの細菌が混じり合い、その雑多な菌がある中で、それぞれがバランスよく存在しているのです。

私たちの知らないところで、すごいことが行われています。